2014/12/18

2014年 年間ベストアルバム 1位〜5位

早速だが、2014年の年間ベストアルバムを決める。
初回のブログで一年の総決算、一応年末だし。
でもこういう特集がなんだかんだ言って、雑誌やテレビで一番多くの読者、視聴者を得ているのは事実なのだ。

まあ、個人的に毎年やっていることでもあるし、いちいちツイッターでランキングツイートをするのも面倒くさいから、ブログでまとめてやってしまえ!ということ(むしろその方法が正解。なんで今までやらなかったのか…)。

ちなみに2013年の年間ベストアルバムはエル・スール・レコーズのHP内で公開して頂いてるので、興味のある方はエル・スール・レコーズのHP内で探し当ててください。
ページのリンクは貼らないのでご了承(諸々事情が…)。

では、本題。
選考期間は、2013年の12月から2014年の今日までにリリースされたアルバムから。
でも、期間はある程度曖昧でもいいと思うし、輸入盤に関してもそこまで縛る必要も無いから、大体の期間ということで。
今回は1位~5位までを紹介。

1. Bebson De La Rue + Trionyx / Groupe Électrogène
今年の新人賞(新人か?)と言おうか。
キンシャサのシンガー、ラッパーのベブソン・ドゥ・ラ・リュの2013年1stアルバム。
90年代から活動していて1stというのもちょっと疑わしいが、その長い活動期間で培ったであろう野生的でエネルギッシュな声が、キンシャサのストリート感を伝えるには必要十分で大いに適している。
ジュピテール・バゴンジもそうだったが、この生存本能丸出しな声を持つ者がストリートの兄貴になれるのだろうか。
基本は田舎的でルンバなギターと、おおらかでくぐもったビートで続くのだが、ときに美しく母性に満ちた女声コーラスが、演奏に乗るベブソンを更に引き立てるので、終始一定のテンションを落とすことなく、かつ「ゆるく」聴き続けることができる。
決して自分の内だけで消化しないコンゴレーズ・マナーがジュピテールより庶民的に思えるし、アコースティックでゆるめなファンクとベブソンの放つ声が共存するかのようにマッチしたことで、結果ストリートの再現に繋がっているのだろう。かっこいい!!

2Tinariwen / Emmaar
砂漠のブルース愛好家にとって避けては通れないビッグネーム。
今作ではマリでのレコーディングを断念して、北米西海岸の砂漠まで大移動したとか。
なんでもマリの紛争でメンバーの一人が誘拐されて、イブラヒムが「こんなところで音楽ムリ!」となったそう。
それでも絶対砂漠にこだわるあたりがドラマチックでかっこいい…。
砂漠のブルースって、音が遠くまで果てしなく響いて行く感じが好きなんだけど、彼らは真打ちたる存在なので、ますます空間的な音作りが緻密になってきますね。
アルバムの詳細がアナウンスされたときに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーが参加していると聞いて少し不安になった。
彼って技術的には言うこと無いんだけど、まだ若さに任せた勢いで切り抜ける部分が自身のバンドで見られるから、ティナリウェンのルーズさと合わないんじゃないかと思っていた。
でも、そういう心配は大体裏切られるもので、あれ?ジョシュどこ?っていうレベルまで溶け込んでるじゃないですか。
とはいえ、違う地域の砂でも受け入れる広い砂漠のようなバンドでありますし、演奏のジャム的要素が外部を受け入れやすくしている部分もありますね。
音楽的な水準が低くなることは絶対に無いし、ハンドクラッピングの一つも逃さずグルーヴに変えるあたりが王者の貫禄と言えるのだろう。

3.  Hassan Hakmoun / Unity
12年ぶりの新作だろうか。
グナワの先駆者として世界的に有名になった彼だが、12年というブランク期間に何をしていたかというと、日本人女性と結婚し、特に何をすること無く自由奔放に生活していたとか。
プライベートに関しては聞いた話でしかないから何とも言えないが…。
数年前からNYで着々とレコーディングしていた本作が遂に日の目を浴びたということで、2014年最大の作品として軒並み高い評価を受けたのだが、いやはや、これは本当に衝撃的なアルバムである。
まず聴こえてくるのが、超ド級な低音ゲンブリのリフ。
グナワを通り超え、ハード・ロックやファンクをも手中に抑え込んだとでも言うべきか、ハッサン流のスモーキーでヘヴィなグナワが、ブランク期間を無駄と思わせない進化と答えなのだ。
ハッサンの声にも注目しなくてはならない。
もはや人間を超えている。まるで猛獣のような声。
この声を含めて彼のグナワは成り立っており、本来グナワを構成する要素である呪術的なグルーヴも、彼の声を目として渦巻いている。
なぜ今作を1位にしなかったのかというと、個人的な話、1993年作のHassan Hakmoun & Zahar / Tranceのほうが実は好きなのだ。
年間ベストとは関係無いが、スタイリッシュでキレ味のある過去の作品もオススメしたい。

4. Angélique Kidjo / Eve
ミリアム・マケバではない、キジョだ。
見てくださいよこのジャケット。おしゃれ〜。
資◯堂のTSUB◯KI的な。
ジャケットが表現するように、美しくて強いアフリカ女性のバイタリティを、キジョが張りのある声とダイナミックでエレガントに作り込まれた演奏を従えて歌い上げるのだ。
アフロビート、レゲエ、ルンバ、スークース等々を見事にポップスとして生まれ変わらせている。
何度も言うようだが、演奏のレベルが妙に高い。
数曲ほどフィールド・レコーディングを行っているようで、かつこれほどのレベルとは…。
どうやらプロデューサーのパトリック・ジレット、なかなかのお方なのだろう。
聴いていると何かに包まれている感覚に陥り、あぁ、これがキジョの母性というか懐の深さというか、女性の強さみたいなものを心に直接突きつけられるよう。
今作、ドクター・ジョンやヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリがゲストで参加していますが、キジョ本人は自分の母親もゲストで参加していることのほうを強くアピールしているようです。

5. Massilia Sound System / Massilia
今年で結成30周年、その記念というべきアルバム。
おっさん3人がマイクを持って声高らかに「立ち上がれ!」「マルセイユの誇りを!」と、まあ簡単に言うと戦おうということだ。混ざり合った血として。
攻撃的なリリックを攻撃的なサウンドに乗せて、ときに畳み掛けるように、聴衆に訴えかける姿は心打たれるというものです。
もとよりこのバンドはレゲエ・バンドなのですが、別働隊たちはパンクをやったりブルース・ロックをしたりと様々なので、今作においては、彼らの国フランスらしく「人種の坩堝」ならぬ「ジャンルの坩堝」と表現しておこう。
ヘヴィでありながら戦闘態勢バリバリなビートと3人のマイクリレーは、かっこいい!の一言。
彼らは国を愛し、国民を愛し、自身を奮い立たせ、聴くものを動かす力を持っている。
根本にある土着的なリズムがマルセイユの人々とワールド・ミュージックファンの心を掴んで離さないのでしょう。
昨年、別働隊であるムッスー・テ&レイ・ジューヴェンの来日ライブに行ったのだが、その時のおっさんたちのかっこよさ、渋さ、もう全てがパーフェクト!

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